
「名古屋と結婚式教会」
結婚式教会は信者のいない宗教建築である、日本人のキリスト教徒は全人口に対し1%、
しかし、教会で結婚式を挙げたいカップルはおよそ60%にのぼる。
信者が教会で結婚式を挙げるのは常識であり、その逆のことが日本で起きている、
必然的に教会が足らなくなり。教会の形をした建築をつくる。
それが結婚式教会=ウェディングチャペルなのであり、まさに信者なきカテドラルである。
結婚式教会は結婚式の様式の変化が大きく影響している、
10年程前には神前式がキリスト教式の結婚式を割合的に上回っていたが、
近年では圧倒的にキリスト教式の結婚式が増えている。
こうした変化にはメディアに大々的に取り上げられた著名人の結婚式が関係している。
調査は名古屋市近郊の独立型(ファサードに表われる)の結婚式教会を集めている。
立地によって特徴が大きく異なり郊外型と都心型の二つに分けられる。
郊外型は広い敷地の中に周辺の景観から分断された空間を造り、
大規模な結婚式教会を建てる。敷地全体がヨーロッパの都市を模してつくられたテーマパーク型である。
都心型は多種多様な施設が入り混じった都会的な風景の中に、突如結婚式教会が現れる。
ミスッマッチな景観をつくる。
どちらもゴシック式の教会を模して造られていて、
できる限りディティールまで似せて造ろうとしているものもあるが、
材料の問題や結婚式に合わせていることで本物の教会とは異なる。
特に強く現れているのは奥行きと高さの関係と大きく造られた階段である。
奥行きと高さの関係は、本来の教会は集会を目的に作られているので、奥行きが高さよりも長い。
しかし結婚式教会は高さのほうが奥行きよりも長い、見た目のイメージを優先させたつくりになっている。
大きく造られた階段は、すその長いロングドレスを引き立たせる役割を持っていて、
フラワーシャワーなどのイベントの舞台装置にもなる。
また建築家による結婚式教会は大規模なリゾートホテルに併設される形でつく売られることが多い、
代表的なものに安藤忠雄の『風の教会』『水の教会』がある。
この結婚式教会を安藤忠雄の正式な教会『光の教会』とくらべると結婚式教会は、
風景を見るための意匠劇的なシークエンスが用いられており、
『光の教会』の神聖な閉塞感とは対照的である。
また最近ではまさに舞台装置のような動的なシークエンスを持つ、
クラインダイサム(暗いんだいさむ)アーキテクツの『リゾナーレチャペル』が印象的である。
結婚式教会ひとつを取り上げて建築的価値を問えば、賞賛を得ることはなく、
むしろ非難ほうが大きいだろう。
しかし、結婚式教会を現代の宗教建築として捉え、
そこに日本人の無宗教感あるいは、形式を重視する価値観が具現化された建築として認識すれば、
結婚式教会の本当の面白さが見えてくる気がする。